今回は私のための忘備録的な位置付け.ビンディングを選ぶときにこんな記事があれば役立ったのになぁという経験を活かして書いてみる.とにかく情報がなくて,メーカーや製品情報も少ないので独学では知見を得るまで相当時間がかかった.あくまでも,忘備録なので話半分に読んで頂ければ幸いです.
目次
各メーカー
ATK(エーティーケー)
イタリア
輸入代理店:ミヤコスポーツ
金属の削り出しにより製造.素材密度の均一性,素材ムラの抑制,内部ヒビ割れの抑制,高い寸法精度,表面の高度な平滑性を狙う.全体として圧倒的に軽いがその分国内正規価格はビビるくらい高く,基本的に10万円越え.もはやビンディングの値段ではない.個人輸入であれば半額を目指せる.
追記:新たにFR16を海外通販で447.31€で購入した(2022.8).
ATKは軽量にも関わらず保持力が高く信頼性は高い.一部界隈では使用率と注目度が年々上がってきている.
特にフリーライダー系統はフリーライドスペーサーが付属するので滑走性を各段に向上してくれる.従来の伝統的なテックビンディングはブーツのヒールを固定する際に接しているのはピンのみだったが,このスペーサーを追加することで板そのものにダイレクトに力を伝達することが可能となる.
トラブルの事例は以下の通り.
ATKのフリーライダー系統はトゥーピースが板バネになっておりブーツをはめている際はこの板バネが雪や氷が入らないようになっているのだが,装着時ここに雪が入ると逆にその雪を圧縮して閉じ込めてしまい雪詰まりを起こすというトラブルがあった.しかしTwitterで使用率の高い某コミュニティの方に話を聞くとシーズン通して複数人の使用でこのような症状は全くなかったらしいのでレアケースと思われるとのこと.念のため板の装着の際は雪が入りこんでいないかは確認しておいた方が良いだろう.
さらにウォークモードの際,ボタンが凍ってブレーキが格納されないというトラブルもあった.
2023.1.15 追記
下記のようなトラブルも…!!やはり完璧なビンディングは今だ存在しないということを肝に銘じないといけないですね…
超絶悲報 pic.twitter.com/axjOoN8Rlo
— ルシャ (@ryocube) January 14, 2023
Atomic(アトミック)
オーストリア
輸入代理店:アメアスポーツジャパン
言わずと知れたスキー界の重鎮アトミック.ちなみに親会社はアメアスポーツ.同じく有名なサロモンと似たようなコンセプトの商品展開が見られる.ここ数年(2021年4月現在)は山スキーのビンディングにも変革期をもたらすシフトビンディングの製造を手掛ける.
このビンディングは驚くことにアルペンブーツ,ツアーブーツ等の規格を越えて履ける互換性の高さ故,界隈では注目が集まっている.
カナダで活動するアトミックのアンバサダーである佐々木悠氏はアルペンビンディングと同等の保持力で最高の滑りができると絶賛している.しかし構造が複雑故にトラブル等の心配が拭えないのも事実.佐々木氏曰くハイク時にトゥーピースが凍ると動きが鈍くなる点,ハイク時にブレーキが降りてきてしまう点,ヒールピースのストッパー内に雪が詰まりやすい点があるとのこと.しかしこれらの症状を十分理解すれば問題なく対処できるとのことだった.
ちなみに親会社が同様にアメアスポーツのサロモンとアルマダでも全く同じシフトビンディングが販売されている.違いは色とロゴくらいなので好きなデザインのシフトを手にいればいいと思う.アルマダのものは若干高い.
Cast Touring(キャスト)
アメリカ
かなりマイナーなメーカーで使用者もかなり少ないと思われる.ハイク時はTECHで登って滑走時にはLOOKのアルペンビンに付け替えることで滑りにも一切妥協しないゴリラビンディングとなっている.入手方法は白馬のスキーバム商会を通して購入するか本国公式サイトから個人輸入するかどちらか.似た製品にはMarkerのDUKE PTやSalomon Shift等が挙げられる.
Dynafit(ディナフィット)
オーストリア
輸入代理店:Rexxam
ロゴに猫ちゃんを据えるビンディング界の老舗.ちなみに猫ちゃんは雪豹(Snow Leopard)をあしらっているらしい.TLTビンディングはこのメーカーに端を発し,山岳スキーの礎を構築した.界隈でも使用率は断トツ.相対的に安価な製品も多く手が出しやすいのも良い.スキー板やブーツも展開しているが山岳スキーレース(スキーモ)が主軸であり,とにかくスピードやツアーに特化した印象.ちなみにビンディングもその流れで開発されているため滑って楽しいかは別問題となっている.
Fritschi(フリッチ)
スイス
輸入代理店:ロストアロー
ヒールピースがアルペンビンディングと同様のテックビンディングでは最軽量.ただし触った質感はおもちゃっぽい.珍しいことに開放機能はヒールピースだけでなくトゥーピースも存在し安全性は高い.流石スイス製!!バイス式のヒールピースのテクトンとピンヒールのヴァイペック.価格差は僅かなので私が買うならテクトン一択だろう.ブーツをトゥーピースをはめる際,かなりのソフトタッチでパチンと閉まってしまうのである程度慣れは必要かもしれない.
G3(ジースリー)
カナダ
輸入代理店:キャラバン
G3といえばやはりツアー系のZED(ゼド)とION(アイオン)の二本柱.Dynafitと負けず劣らず使用率が高い.製品のラインナップ的にも滑走よりもツアーを重視するような展開となっている.やはりメリットは入手難易度の低さとアフターケアだろう.国内代理店がキャラバンなのは安心感がある.
ちなみにZEDとIONの細かい違いを下にまとめておく.
〇重量
ZED12→345g
ION12→579g
〇ヒールピースの調整幅
ZED→前後30mm
ION→前後22mm
〇ステップイン
IONの方がブーツストッパーの部分が横に広くステップインがしやすい
〇ツアーモード
IONはヒールピースをツアーモードの状態で上から少し押し込むことによってヒールピースをロックできる為ハイク時にスキーモードに戻る心配がない.
〇滑走感
ZEDの方がTECHピンの位置が低く接雪感に優れている為IONより滑走フィーリングが優れている.
〇共通する特徴
・トゥピースのTECHピンが装着時に斜め上からテックホールを抑え込むような角度になっている為横方向の力がかかった際に誤開放が生じない設計.
・ブーツ装着時にもTECHピンの下側が肉抜きされた構造なので間に詰まった雪や氷をはじき出すことができ,確実な装着が可能.
・強度面はZEDもIONも変わらない.
出典:キャラバンショップチャンネル「【徹底解説】G3 ION&ZEDについて語る!」
現行モデルは改善されたか不明だがヒールピースを捻る時に固定しているパーツがプラスチックで擦り減るトラブルや,トゥピースの先っぽが折れたりする等のトラブルも報告されている.
降りられないかと思いました…😭 pic.twitter.com/xfRB1uBE4h
— 中澤慧|Kei Nakazawa (@532shg) January 15, 2022
Marker(マーカー)
チェコ
輸入代理店:MDVスポーツジャパン
ビンディングのマーカー,ブーツのダルベロ,スキーのフォルクルの三位一体の一角.山スキーに限らず,自社ビンディングのないスキー板についてるビンディングの大半はマーカーのものと言っても過言ではない.
中でもキングピンが名実共に有名でバイス式のヒールピースは圧倒的な滑走性能を謳うが軽さは犠牲になっている.初代の金色,二世代目のオレンジ,三世代目の赤色が存在.報告されている問題としてはトゥーピースのモード切り替えのレバー下での雪詰まりだったが,現行の赤色ではラバーを導入することで改善されている.
17-18モデル(初代)と18-19モデル(第二世代)のキングピン(10&13)がトゥーピースのピンの破損による保持力の低下からビンディングの誤開放が発生するためリコールとなったりもした.そのためか,5ちゃんねるの太板掲示板ではよくネタ扱いされているのを目撃する.しかしこちらのビンディングも入手しやすくかなり使用率は高い印象.
近年ではDukePT16という戦車のようなビンディングも登場.開放値が16もあり,しかもシフトビンディング同様に規格殺しの互換性の高いビンディング.またハイクモードとスキーモードでトゥーピースが分裂する男心くすぐる変形も特徴の一つ.やはりその分相当に重く,片方1kgを超える文鎮でもある.
DUKEとは方向性が真逆の軽快さに振ったツアー系のアルピニスト12(335g(1/2ペア))なんてのも各メーカーの対抗馬としてあったりして守備範囲の広さは一番かもしれない.アルピニストはキングピンのトゥーピースと同じ穴位置のため,インビスを導入することでヒールピースを手軽に変えられる面白さもあると個人的には思っている.ブレーキのついたアルピニストロングトラベルはブレーキの扱いにやや癖があり慣れが必要かもしれない.
salomon(サロモン)
フランス
輸入代理店:アメアスポーツジャパン
アウトドア界の多国籍企業の申し子.スキーだけに飽き足らず,トレラン製品に至るまでなんでも作ってる.アトミックの項目でも書いたように主に展開しているのはシフトビンディングとなっている.サロモンオリジナルは青が差し色となっていて個性が出せる.アトミックのシフトとほぼ変わらない黒色のモデルも存在する.
Plum(プルーム)
フランス
仏国の金属加工会社がビンディング界に参入.ネジ以外の部品のほとんどをアルミ柱から削り出すこだわりがすごい.それ故高強度で軽量なのを売りにしている.しかし使い勝手は悪いとの噂もあり.とにかく情報が少なくて謎が多い.また私の知見が深まれば追記します.
まとめ
有名所は概ねこんな感じだろう.OEM品や明らかに日本であまり流通していないようなビンディングは今回除かせてもらった.
初めてのテックビンディング.私は迷いに迷ってマーカーのキングピンを購入した.山の世界には元からいたけど,スキーの世界には基礎スキーから入った私.どうしても軽快さよりも滑走性能が欲しかったのだ.また順次分かったことがあれば追記していこうと思う.
終わり
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