【山スキーを始めたいっ!!】高価なビンディングはインビス化で兼用せよ!~加工方法と注意点~

スキー用インサートビス

板とビンディングとブーツが揃った…となれば後は取り付けさえすればスキーに行ける.

「あれ?ビンディングの取り付けって店にお願いしないと取り付けられないんじゃ?」

正攻法ではそれが確実でしょう.大手のショップのページを見て回ったところ,概ね7000円くらいで取り付けてもらえるようだ.しかしよくよく考えてみればビンディングの取り付けって穴開けがメイン.それならば自分でもできる.

板が一台だけならばそれで問題ない.しかし板が複数台あると板の数だけビンディングが必要になる.それではお金がかかってしょうがない.

「どうにかビンディング1セットで複数の板を使えないものか?」

そもそも一度取り付けしたビンディングの木ネジを緩めて違う板に取り付けという作業はご法度.そこでインサートビスの登場である.インサートビスを板に埋め込むことでこの「繰り返し着脱」を可能にしてくれるのだ!今回はビンディングの取り付け,及びインビス化について詳しく紹介しようと思う.しかしあくまでも作業は自己責任でお願いします.どんな結末を迎えても私は全くもって責任はとれません(笑).

目次

準備編

購入するもの

まずはインビス化にあたって必須の工具を用意しよう.やはり白馬ブルークリフさんでスターターセットを購入するのがお手軽で手っ取り早い.注意点として,このセットにはインサートビスが板1台分しか入っていないので追加でインサートビスを購入すると良い.これ以外には海外通販でインサートビスを個人輸入するという方法もあるが,結局白馬ブルークリフさんで購入するのとそう値段も大きく変わらないのでここで購入するのが無難だろう.他の工具についてはホームセンター等で手に入れることも可能だ.

参考までにインサートビスが買える海外のサイトも貼っておく.Binding Freedom

ステンレスインサートビス18個
M5ステンレスネジ18個
5/16-18上タップ
タップハンドル
6.3mmドリルビット
金属製ドリルストッパー
3mm六角Tレンチ
エポキシ接着剤
おまけのネジ止め剤

使用した主な工具

さらに,人によってはこれらの工具は最低限揃える必要がある.どこにでもあるDIY工具だが持っていない人はホームセンターなんかに買いに行こう.この写真のうち,多くが上で紹介したスターターセットと重複している.

この他に養生テープやマスキングテープがあると便利だ.

ドリルドライバー
6.3mmドリルビット
金属製ドリルストッパー
油性ペン
下穴用ドリルビット()
3mm六角レンチ
5/16-18上タップ
タップハンドル
8mmスパナ
カッターナイフ
プラスドライバー
ポンチ
ハンマー
さしがね
ノギス

テンプレート

続いてテンプレートのダウウンロードだ.本来ショップでビンディングを取り付けする場合,メーカーがショップに提供している専用のガイドがあるのだが個人ではそれを用意するのは不可能だ.そこでテンプレートを利用することになる.

ただ,テンプレートはあると便利だがなくてもビンディングの取り付けはすることができる.どこぞの誰かが作ったテンプレートを100%信頼する方が危険なのではという考えから私は結局現物合わせで取り付けしてしまった.

テンプレートは次のサイトからPDFをダウウンロードすることができる.最新のモデルやマイナーなメーカーのものはリストにないので注意したい.

Binding Freedom

GitHub

キングピンのテンプレート

作業の流れ

①板の長手方向に中心線を引く

簡単なようで意外に難しい.板にプリントされている文字や絵柄は左右で微妙にずれていたりするので慎重に線を引こう.繰り返し計測して間違いがないか何度も確認することが重要.

②ブーツセンターをメーカー推奨位置と合わせる

この作業はテンプレートがあれば簡単になるが,ここではそれ以外の方法を紹介する.

ブーツセンター

ブーツセンターとは文字通りブーツのつま先-かかと間の中心のこと.どんなブーツにも必ず印が入っている.サロモンのブーツの場合は「A――A」という線が入っている.

メーカー推奨位置

メーカー推奨位置とは板のスペックを最大限に引き出すようにメーカーが設計した最適なブーツ取り付け位置のこと.

これも必ずどんな板にも印が入っている.ここで注意したいのはよく聞くドセンターとの違い.ドセンターは板の実測値のちょうど真ん中の箇所になるのでメーカー推奨位置とは全く意味が異なる.情報集めの際には注意しよう.

ブーツセンターの合わせ方#1

ブーツや板は立体的で線を合わせにくいのでマスキングテープで印をつけると作業は楽になる.マスキングテープは貼る際にずれやすいので注意しよう.

続いてさしがねで左右両側から何度も確認してブーツの位置を微調整.この時上から見てブーツが中心線を通っていることも合わせて確認しよう.

ブーツの踵部分に印を付ける.

ブーツセンターの合わせ方#2

2022.8.30追記

新たにビンディングを取り付ける際にブーツに刻印されていたブーツセンター位置が度重なる使用でゴリゴリ削れてどこか分からなくなってしまった.

その為今回は「ブーツセンター=ソール長の半分」を利用して線を引っ張ることにした.精度的な観点からこちらの方が現物合わせよりも優れているし作業も早いので断然オススメだ.

私のブーツのソール長は305mm.その為メーカー推奨位置からテール方向に305/2=152.5mmの場所がちょうどかかとの位置となる.

③トゥピースの穴位置を決める

続いてブーツにトゥピースをはめて,再度先程の踵部分にブーツを合わせるとトゥピースの位置が分かるようになる.

穴位置を決める前にトゥピースの位置が左右の板で違っているとヤバいのでマスキングテープ等で同じ位置にラインを引けているか何度も確認する.

確認が終わればポンチや桐等で下穴の基準を作ろう.穴位置はテンプレートをあてがっても良いし,トゥーピース現物を合わせて油性ペンで印を付けて何度も微調整という方法でも良い.

穴開けの際に一番避けたいことは穴位置がズレてそもそも板に取り付けられないこと.木ネジの場合は多少の融通が利くが,インビスは金属なのでかなり精度が求められる.

そこでステンレスネジとインビスをトゥーピースに挟み込むように取り付け,ポンチや桐で作った穴位置にズレがないかだけは何度も確認しよう.この時テンプレート信用しすぎるとビンディングの僅かな個体差の違いで穴位置が若干ずれる場合も考えらる.ここの現物合わせだけは必ず行おう.

下穴用の細いドリルで少しずつ穴を大きくし(この時深く開ける必要はない),上と同じ作業を繰り返す.穴位置に問題がある場合は浅くて小さい穴であれば数ミリ程度移動させる分にはギリギリ軌道修正できるはず…

④トゥーピースの穴開け

穴の深さはインビスの+αを開けておくとOK.インビスはちょうど9.0mmなので9.5mm程度の深さで大丈夫.ちょっきり9.0mmの深さの穴だとインビスの面が出て埋まり切らないかも.インビスは一度埋めると救出不能なので穴の深さはちゃんとノギスで測りましょう.

下穴を開けるのはめっちゃ緊張…心配であれば下穴を開ける際にもドリルストッパーを付けてあげましょう.専用のものがなくてもビニールテープをグルグル巻けばOK.

本チャンの穴開け.ドリルストッパーがズレて板を貫通なんて悲劇の可能性もあるのでその都度しっかり止まっているか確認しよう.

⑤タッピング

無事穴開けが終わればドキドキのタッピング.っと…その前に穴開け後は穴にゴミが入っているので掃除機でマメに削りカスを吸ってください.タッピング時にこのゴミが悪さをする場合があります.

何よりもタッピングで気を付けることはねじ山を潰してしまうこと.こうなるともう悲惨で下手すりゃ穴埋めてやり直し(笑).タップハンドルは少しずつ回そう.ドライバーと違って押すのは厳禁だが,始めに穴に食いつくまでは若干押しながらハンドルを回します.穴に食いついてからは垂直が出るように調整しながら回すことを意識する.

さらに穴の深さの目印にマスキングテープでも巻いておくと失敗は少ないかと.タッピングの切りくずはタップの隙間に入っていくので逆回しにしてその都度カスを取り除く必要はない.

ここまで来れば一安心?

⑥インビスを埋める

インビスを埋める際には接着剤を同時に入れる.今回はスターターセットに付属のエポキシ接着剤を使用する.

均等の量を混ぜ合わせて

穴にぶち込む!量は気持ち多めでもいいかも.多すぎるとムニュっと出てくるので慣れればなんとなく適量が分かってくる.

接着剤を入れればお待ちかね.インビスを埋めていく.この時ナットを付けているとインビスからステンレスネジを抜きやすい.出てきた接着剤がインビス内に入り込んだ際は丁寧に拭き取ろう.最後にバリをカッターナイフで削れば完成!!

最後にトゥーピースが取り付けられるか確認.インビスはかなりシビアな公差なのでそれぞれのネジを少しずつ回していけば上手くいくはず.

⑦ヒールピースを取り付ける

同様の作業をヒールピースでも行う.ヒールピースが前後に動くモデルのビンディングの場合は調整幅のどの地点で取り付けるか考慮しておこう.

前後に動かないピンヒールの場合はより慎重に.またピンヒールはブーツのかかととビンディングの間に何mm隙間を開けるかもメーカーによって異なるので確認しておこう.

ATK FR16の場合は4mm離す.

インビス化 Q&A

最後に私はインビス化やビンディング取り付けにあたって抱いた疑問点を紹介しようと思う.

スキー板のインビス化がマイナーなのはなぜ?

→手間がかかるから&ネジが緩む恐れがあるから

私も取り付けするのに作業だけで丸一日かかりました.そもそもインビス化をしようと思っても情報が少ないのでいざ作業に取り掛かかろうとしても勇気が出なかったです.不安な人は木の端材などで練習すればスムーズに作業できるかと.インビス加工自体はスノーボードでは割と主流らしいので問題ない.

ネジの緩みはマークでも入れて滑る前に確認すれば特に問題はないでしょう.

インビス化はショップにお願いできますか?

→基本的に不可能.

ショップではビンディングメーカーがショップ向けに提供している専用のゲージを使って木ネジで取り付けを行うことまで.成功も失敗も全て自己責任…しかし板に対する理解は圧倒的に深まる.

ステンレスネジと木ネジで形が違う可能性は?

→白馬ブルークリフさんに使用するビンディングの種類を伝えると専用の寸法のものを用意してもらえる.

対応がめちゃくちゃ丁寧なので安心できるショップだと思う.必要に応じてビンディングに付属の木ネジを送付することでマイナーなビンディングにも対応してもらる.送付した木ネジは商品と同梱して送り返してくれます.

木ネジで開けた穴を再利用してインビス化できますか?

→恐らく可能…!!

木ネジとインサートビスの寸法を比較した際に大抵の場合,木ネジの外径の方が細いことが多い…と思われる.その場合元々開いていた穴を広げてタッピングし,インビスを埋めれば無事インビス化完了です.元の木ネジはメーカーによっても違うと思うので責任は取れません(笑).少なくともMarker kingpin13とATK FR16はインビスよりも径が小さいことを確認済みです.

参考までに↓

どれくらいの作業時間ですか?

→1日仕事.

慣れもかなり影響します.最初は分からないことだらけでかなり時間がかかりました.ショップで普通に取り付けてもらう分には7000円近くかかるそうですが個人での作業時間を勘案すると妥当かも.ショップで普通にビンディングを取り付けてもらい,後でその穴を利用してインビス化するとかなり負担は減りそう.

穴開けで垂直が出せるか心配です

→私は特にガイド等は使わず作業して十分取り付けが可能でした.

人によっては家庭用のボール盤やドリル用のガイドなんかを自作して穴開けしているようだ.私は穴開けの際①ポンチ②Φ2.5の下穴③Φ3.8の下穴と順序を踏んで本チャンの穴開けを行った.

穴開けが失敗したらどうしますか?

→エポキシパテで埋め,固まったら再度穴を開け直そう.

ビンディングの穴埋めにはエポキシパテ?!

中古で仕入れた片方の板は穴だらけで私の使用するビンディングと干渉する事態が勃発.そこでエポキシパテでなんとか?インビス化を成功することができた(笑).エポキシパテはスキーの主な素材である木よりも固くなることを見越しての処置だが…(追記)1シーズンガシガシ山で使って何ともないです.

インビス化でどれぐらい重たくなる?

→23g程度.全体に占める重さは木ネジとほとんど変わらないでしょう.

まとめ

以上インビス化とビンディングの取り付けの紹介でした.作業を終えてみて,そこそこシビアな作業が要求されるので大人しくビンディングを複数購入して店で付けてもらうのも悪くないかと(笑).けれど上手くいけば同じ板で滑走用やツアー用,はたまたアルペンブーツ用と用途も変えられるし,冒頭の通り一つのビンディングで複数台の板を乗れたりと可能性は無限大かなと思う.是非チャレンジしてみて下さい!!

終わり

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