【初心者必見】膝の痛みともおさらばする山の歩き方

今回は素人の経験則の積み重ねによるところが大きいので話半分に読んでください.

山での歩き方…それって合っていますか?「小股で歩きなさい」と耳にタコができるくらい聞きますがそれにも理由があります.しかし多くの人は何故小股なのか合理的な理由を説明できません.それでは説得力もくそもないでしょう.

今回はかなり長丁場な解説になるので結論を先に示します.

1:足を次のステップに置く

2:ステップに置いた足に体を近づける

歩き方の本質はこれだけなんですよ.これを順に追って説明します.

目次

経緯

私は山で一度,腸脛靭帯炎,いわゆるランナーズニーになりました.人間一度痛い目に合うとそうならないように真剣になるようで…一番効率のいい歩き方を考えるようになりました.それまでは人の意見などつゆ聞かず,ただガムシャラに足を動かして歩いていただけ.今思うと登りは大股でガシガシと登っていたし,下りは走りまくって制御が効かないしでもう滅茶苦茶.

しかし正しい歩き方をすると足は全く痛くなりません.(ここでいう痛みってのは体に悪影響を及ぼすような足の痛みのこと.無理をすれば筋肉痛にもなるし,足裏の疲労感だって出ます.)

体は思ったより自分の思い通りに動かない??

まずこのイラストのように手を真っすぐ横に広げてみて下さい.

できるわ…あほ!!と思うかもしれませんが…

意外と正確にはできないのが現実です.鏡の前でやれば一発で分かります.地面と平行にはならず若干斜めっていたりするのが関の山でしょう.私もそうでした…

そうです.意外と自分の体は正確に動かせないというのが現実です.山歩きでも同じです.しかも個人差があって男性/女性の骨格の違い,左右差,利き足,X脚/O脚,ガニ股/内股もあって症状は人それぞれ.こういう自分自身の体の構造を完全に理解しているのがプロアスリートなんだと最近思うようになりました.

登山で足はどう動くのか?

力こそパワー!!!!脳筋お兄さんや脳筋お姉さんになるのはまだ待って下さい(笑).

脚部は基本的に股関節・膝・足首で構成されていてこれらが複合的に動いて歩行は成立しています.山歩きで多いトラブルは圧倒的に膝.しかし逆に股関節が痛いだとか足首が痛くてしょうがないなんて話はほとんど聞きません.

そう…ほとんどの人が股関節も足首も意識的に使えていないんですよ.他で補えば必然的に膝にかかる負担は激減するはずです.

まずは膝だけでなく股関節と足首を意識的に使うように山を歩けばいいと思います.

股関節の可動域
股関節の可動域
足首の可動域
足首の可動域

実際,私もこれだけで山中での持続時間が劇的に変わりました.むしろ股関節が痛くなり始める始末でした(汗)

ここで私の感覚を残しておきます.

・ステップを上がる時は股関節から動かすのがミソ.

・脚部は股関節を動かすことで結果的に膝が動くくらいが正解の感覚かもしれない.

・足が次のステップに着地し,股関節を動かして体を押し上げ,最後に若干骨盤を傾けると次の足が前に出やすい.

街の歩き方と山の歩き方

そもそも学校や職場に通ういつもの「街の歩き方」と「山の歩き方」しっかり区別していますか?これらは根本的に違います.ただ林道だとか木道だとか平坦な区間は街の歩き方でも大丈夫です.ここで山の歩き方というのは傾斜の付いた道を歩く場合としておきます.

歩く速さ(個人差あり)速い(4~6㎞/h)遅い(~3㎞/h程度)
足裏どこかが離れているほぼぺったり
重心位置常に足元の近く常に足元の近く
足の置き場(足跡)
片足を〇とする
 〇

  〇

 〇

  〇
 〇
   〇
 〇
   〇
 〇
   〇
 〇
街と山での歩き方の違い

どうでしょう??

街の歩き方はつま先で蹴りだして踵で着地するので絶えず足裏のどこかが接地していません.それに対して山の歩き方は速度が遅い分足裏はほぼ全体が接地していると思います.また山では足場が不安定なことも多く,足の置き場は進行方向に置けないことがほとんどで表のような足の置き場になることがほとんどだと思います.(足裏のどこで荷重するかという話はまた今度…)

しかし街も山も共通して言えるのが重心位置は絶えず足元近くにきているということです.

は???当たり前やろ?

と思うかもしれませんが膝が痛い人はこれができていない可能性が非常に高いです…

人の重心は大抵へそ辺りにあると言われています.街の歩き方ではしっかり足に付いていけている.だからこそ日常で足に痛みは出ない.ですが山はどうでしょう.次のステップを目前に何も考えず足を踏み込むと足元近くに重心(へそ)は来ないと思います.

歩幅と重心位置の関係
左が小股・右が大股で歩いた時の場合

ここで冒頭の「小股で歩く」というのが効いてきます.逆に重心移動さえできれば大股で歩いてもいいと思います.ただ多くの場合山を大股で歩くと膝を酷使することに繋がります.

さらに「小股で歩く」と重心移動が小さく済んで余計な筋肉を使わず進めるので持久力も自ずと向上するはずです.

さらに歩くという一連の動作は同じですが,ステップを一段登る時に「足を踏み込む」という考えを辞めて,「次のステップに置いた足に体を近づける」という発想で歩くと重心移動とは何かが分かりやすいと思います.

かなりマニアックな話

逆ハノ字

逆ハノ字に開いた足
自分視点で逆ハノ字に開く.

ここで,小股で歩きやすくするのにつま先を逆ハノ字に開いてみましょう.そんなにしっかり開く必要はないです.つま先を逆ハノ字に開くことで股関節は自然と外旋します.そうすると股関節を外転する動きが使えて足が上がりやすくなります.そこに伸展・屈曲が加わると足が前後に動くものの,前後の移動量は小さく結果的に小股になり,股関節を効果的に使うことができます.

繰り返しになりますが,大股で歩くと股関節がうまく使えません.大股で歩くと膝の動きが大きく,太もも(大腿四頭筋)に乳酸が溜まって動けなくなりますが,小股だと股関節を効果的に使えてお尻周りの筋肉(中臀筋や大殿筋)も使えるので自ずと持久力はUPします.

重心移動の方向

重心移動,つまり体を足に近づけるとき,必ず膝とつま先の向きが一致している方向に動きましょう.これをミスると膝が内に入ってしまい,余計に膝を痛めつけてしまいます.関節の動きを考えるとどう考えても膝は内には入りません(笑).

また「足を逆ハノ字に開き,重心移動して動く」という一連の動作を想像するとゆっさゆっさと歩く姿を想像するかもしれませんが,重心移動は気持ち斜め前に動くくらいで大丈夫です.体軸までブレる(過度な重心移動)ように歩くとかえって悪影響しかでません(笑).

ストックを使うのは有効

遠見尾根にて(3月)

ストックは登山において足運びや膝の負担を軽減することにおいて非常に有効です.

基本的には右足に乗り込む際には右手を,左足に乗り込む際には左手を使って補助するといいと思います.大げさにやると右足を踏み込んだ時に右肩,左足を踏み込んだ時に左肩を下げると上手くいくはず…いわゆるナンバ歩きってやつです.

あとストックがあると下りはスキーで不整地(コブ)を永遠に滑っているような感じなので楽しいです(笑).(スキーと下山の時の感覚が似ているという話はまた今度…)

ただ私は普段一眼レフを片手に持っているので厳冬期以外ストックは使いません.

足の置き場はずっと前?

そんな訳ではないです.私は臨機応変に出てくる障害物に応じて足を置く位置を斜面に対して前斜め,真横,場合によっては後ろに置いています.

文面にすると訳が分からないですが…前に歩くのに後ろに足を置くと踏み切り版のようになり重心移動を行いやすくなる局面も出てくるんです…特に急登であればこの足捌きは役に立つはずです.

登りと下りで楽なのは?

私は圧倒的に登りが楽.急登が続く方が消費カロリーは多くても体へのダメージは圧倒的に少ないからです.下りは早いけど足へのダメージが半端じゃないです.

筋肉の運動にも登りと下りでは違いが生じてきます.登りで脚の筋肉は「縮む」のに対して下りでは筋肉は「伸ばす」運動を行い,疲労の回復はお察しの通り登りの方が早いです.

下りについて補足

足を痛める歩き方
足が先行してしまった例

下る時,足だけが先行すると重心が後ろに残りがちになって膝に負担を強いてしまいます.さらにここに着地の衝撃が加わるので重心が遅れるだけで膝への衝撃は半端じゃないです.膝が笑って降りられない人は大体こんな感じでしょうか…

換言すると足だけ先にぺっと前に出してる人はこれに該当します.さらにこういう下り方をしているとスピードが乗ってきて止まれないという人もこの症状が出てると思います.

段差近くに足を着地できると重心が足元近くにくる.

そこで膝への負担を軽減するため,またスピードをコントロールするため,下りでは早まる気持ちを押し殺してその場で足踏みするように段差の近くに足を置いてみてください.膝への負担は相当減るはずです.

トレイルランナーが下りでも軽快に走れるのは走っていても体が遅れず重心移動がしっかりできているからでしょう.

トレイルランナー
下りが爆速のお兄さん達.走っていても足元に重心がきている.

最後に…

たらたらと私がソロで考えていたことを書き綴りました.どうでしょうか?何かこの記事から山歩きの新しい感覚でも掴んで頂ければ幸いです.

終わり