2021.8.4~7
目次
概要
知床半島一周2日目.この日は核心部の100m近い泳ぎ区間が待ち受ける無名崎を突破する.しかし序盤から足場の悪い石浜や巨岩帯のアップダウンに苦しめられ思うように進まず焦りばかり募る.さらに蛸岩周辺の泳ぎも厄介で時間ばかりが過ぎていき,余裕の欠片もない一日であった.
距離 :14.4km
行動時間:12h58min
他の日程はここから!
詳細
ルシャからタキノ川へ
朝3:00に起床…出来なくて4:00にうだうだと起きる.ぐっすり眠れたものの昨日までの疲れは全く取れていない.
食欲はそんなにないが今日は核心部の泳ぎ区間が待ち構えているのでパスタ200gを湯がいて腹にねじ込む.ダメ押しにソーセージ1袋.
気温は22℃.半袖短パンで快適な気温だが,今日は泳ぎがあるので始めから下にはウェットスーツを着込む.流石に暑くて気が滅入りそうだった.
2日目が始まる.忘れ物なし!出発!!昨日苦しめられた林道はこの先の19号番屋まで続いている.
出発して早々にフレッシュな熊の糞.落ちているのはこれだけではない.歩ていると至る所に目に付く.30歩も進めば見つけてしまうと言っても過言ではない.そう,ここルシャは熊の楽園なのだ.幸いにも朝から見たのはエゾシカ達.熊と序盤で鉢合わせせずに済んだ.
快適林道ウォーキングにも終わりが見えてきた.現在も運用されている19号番屋である.これより先には道はなく,先端までは道なき道を進んで行かなくてはならない.
最初に現れたのは石浜.知床の浜は基本全部石浜と聞いていたものの,マジか~~~って感じ.石一つ一つがでかくて丸い.浮石が多いし,足の置き場も難しい.ふと振り返ってみても全然進んでいなくて焦りが募る.
さらにこれも浜である.地理院の地図でパッと見てもちょっとここまでは予想できなかった.確かに浜の側に崖マークあるなぁとは思っていたが…どうやら知床で僕たちが想像する浜は等高線しか引かれていないのが該当するらしい.
岩の表面はかなりザレザレで崩れやすく通過には時間がかかる.私たちは序盤から素手で岩を触りまくっていたため最終日には手がボロボロになってしまった.皆さんは軍手か何かを持参することをオススメする.私たちは持ってきていたのにめんどくさがってあまり付けなかった…
8:37.ようやくタキノ川の番屋が見えてきた.こういう岩のアップダウンがあって500m進むのにもやっと.イメージはアルプスの細かいアップダウンのあるキレットのような岩稜帯に近い感じだろうか?
タキノ川の番屋に到着.知床五湖を出発して一日でここまで来るのは流石に無理でした(笑).めいいっぱい水分補給とアイシング.キンキンに冷えた水が沢ごとに汲めるのは有難い.そのため水は行動中に飲む1L程度しか持ち運ばなくて良かった.
蛸岩にかけて初の泳ぎ区間
タキノ川を過ぎると,さも当たり前かのように入水する区間が出現.おおよそ股下程の深さだろうか.一眼レフを仕舞って,濡れてもいい装備で入水する.この日の最大干潮時刻は朝の7:00.潮はかなり引いていてもこのような区間が出てくることに私は驚きを隠せなかった.
「うわ~~~マジか~」
蛸岩近辺で泳ぎ区間があると聞いていたけど,確かにこれは泳いではいない(笑).
さらにテクニカルなことに,さっきの巨岩帯×入水のダブルパンチ区間が現れる.
どうやら3~4m程泳ぐ(胸くらいの水深)必要があるらしく急遽,秘密兵器のUKIWAを膨らませる.お値段なんと800円.安い!!私のザックは必要最低限のモノにはモンベルの沢登用の防水バッグで対策していたものの,ザック本体が濡れると途端に重くなるのでできる限り海に入れたくはなかった.そこでこの浮き輪の登場である.
kyoニキはそもそもザック自体がターポリン製の防水ザック.私が浮き輪を膨らましている間,先行してくれた.
浮き輪のお陰で初の泳ぎ?は難なく突破.再びファッキン浜歩きが再開する.
またもや股下程度の入水があったりして…
ようやく蛸岩付近の泳ぎ区間へ突入.最初は約5mの岩の水路にドボン!!ウェットスーツを着ていることもあって水に入るの自体は気持ちいいくらいだった.
そこから岩のへり際を歩いてどうしても進めない区間と対面.へつりでもある程度進めるかもしれないが,変な体勢で落ちると荷物の面倒まで見れないので安全に入水できる所から潔く海へ入る.
今度は20m程度の泳ぎ.幸い波は高くはないのである程度快適に進めた.しかしkyoニキはザックを背負っての泳ぎ.どうしても水中での体勢が立ってしまい思うように泳げず,精神的に撃沈していた…一応魚突き用のオレンジのフロートを付けていたとはいえ,思うように進めなかったのはショックだったようだ.やはり単身プールで泳ぐのとは訳が違う.「荷物の持ち運び」と「泳ぎ」というのは人の活動の範疇を超えていると感じる.
今度は15m程度の泳ぎ.入り組んだ岩肌に海水が出入りしている所を泳ぐ.流れが速そうで何とも気味が悪い.果てには羅臼昆布パイセンが海の中でウヨウヨ漂っていて不気味さが5割増し.この辺りは波が高いときっと進めもしないだろう.
とりあえず折角持ってきたザイルを試してみることにした.私が先に泳いで後から引っ張るという単純なシステム.kyoニキ曰くがっつり進めて全然安心感が違うとのこと.しかし持ってきたザイルは30m.無名崎の100mクラスの泳ぎには太刀打ちできない.どうしようか…
タケノコのような岩がそそり立つ入り江が姿を現した.こういう場所で本来一眼レフで写真を撮りたいのだがそんな余裕は全くなく,GoProで映像を回すのが精一杯だった.知床半島一周と検索してもウトロ側の画像が中々出て来ないはこの為だと思う.
さらに20m程度の泳ぎが一本.今度はkyoニキが先行して引っ張ってみてくれるとのこと.引っ張てもらえると確かに果てしない安心感だった.
そして突端を回って浜までは30mの泳ぎ!!流石に長いよ(笑).
泳ぎ区間がひと段落して蛸岩を眺めるkyoニキは青白い顔でマヨネーズだらけの食パンをかじっていた.それもそのはずで体勢が立ちすぎて死にかけたらしい…
一向に姿を現さない蛸岩であったが泳ぎ区間が終わって初めてしっかり拝めることになるとは全く思っていなかったのであった.
ちなみに蛸岩周辺の航空写真と軌跡データはこんな感じ.赤色が泳いだ区間.泳ぎの場所と距離はあくまで帰ってから作ったものだから鵜吞みにせず,参考にする程度にして欲しい.
滝裏から通過せよ?カシュニの滝
続いて向かうはカシュニの滝.こちらは知床クルーズからでも名所になる程なのでかなり期待できる.700m程癒しの浜ウォークを経て岩礁帯へ.事前情報ではこちらも泳ぎはないと聞いていたが真相や如何に?!
モンハン3rdの孤島のような世界観だ.確かにギリギリ歩いて行ける.これだよ,これ!!こういう余裕感のある冒険要素が欲しかったの!!
と思っていた矢先,泳ぎこそないもののまたもや入水でした(笑).
突端を回り込むと見えてきた!!これがカシュニさんか!!うひょーーーーー!!スゲーーーー!!
このカシュニの滝は泳ぐ区間もなく滝裏をグルっと回れて軽々突破.
滝裏に潜れる機会も少ないしこれは感動した.
そこからはヘツリで回り込んで…
続いてカシュニの岩
一瞬また泳ぎか~と諦めたがよく見るとポカンと口を開いた洞窟沿いには岩礁が見えているではないか!!ザブザブと癒しの歩きでこちらも易々と突破できて嬉しかった(笑).そして冒険要素満点で楽しかった!!
核心部の無名崎
カパルワタラの番屋跡に立つとようやく核心部の無名崎が見えてきた.この無名崎,実は地図には名前もなく,知床半島一周する者たちに勝手にそう呼ばれているらしい.
無名崎の航空写真は次の通り.ネットに掲載されているブログを見ているとウトロ側を徒歩で踏破しようという人の中でこの突端を巻きで歩いた人はいなかった.南側の50m区間はへつって行けなくもないが浜からは全く見通しが立たなかったので泳いでいくことにした.北側の90mは泳ぎ必至の区間.流氷で岩壁が削られ,オーバーハングしているのでヘツリは不可能だろう.ここが間違いなく知床で最長の泳ぎをしたと言える区間でもある.
しかし実はこの無名崎には巻いて突破できる可能性も孕んでいる.もし巻きが可能なら圧倒的に時短かつ安全に通過できるので計画される方には是非試してみて欲しい.
とりあえず参考のためにも国土地理院の該当箇所も貼っておく.やはりこれだけではいまいち判別し難い所だ.
無名崎の南側の岩壁を浜から見上げる.高さ50mもの岩壁は大迫力だ.やはり巻きの可能性も捨てきれなかったが時間が押していたこともあり,様子を見て戻る時間はないと判断し,我々は泳ぎを選択することにした.
南側の岩壁沿いに50m程泳いでいく.先述の通り,おそらく南側はホールドもしっかりしているので泳ぐことなくへつって行けるだろう.不用意に落下して危険な入水は避けたかったため我々は最初から泳いでいった.
無名崎の突端に到達.先ほどの泳ぎを終えて仕切り直すことができるスペースはあるので再び気合を入れる.当の本人達はここから浜まで泳ぐのか?と思い込んでいたが実際には北側にはテラス状になった岩礁を濡れずに歩いて行ける区間があり,突端から泳いだのは30m程であった.
泳ぎ区間が短縮されたと思うと一安心.しかし満潮時には流石にこの場所も水没しているかもしれない.
再度気合を入れて入水.ラスト90mを泳ぎ切る.北側は波がやや高く,不安要素しかない.さらに岩がオーバーハングしていて波の上下動によってその隙間に危うく挟まれそうになったりする危険もある.肝を冷やす曲面ではあったが無事に浜に辿り着き,胸をなでおろした.
へつり泳ぎで突破を試みるkyoニキ.上陸時も石浜に強烈な波が打ち付けているのでかなり危なかった.2人無事に核心部を抜けると,この先にこれ以上の難所がないと思うとかなり気が楽になった(笑).
マムシの川にて熊の親子と遭遇!
十分に休み,重たい腰を持ち上げて今日の寝床に向けて出発する.2日目はルシャから無名崎までずっとサワタビで歩いてきたが流石に足裏が限界でアプローチシューズを解禁することにした.
時刻は15:40.核心部を抜けたものの,全体の進捗としては芳しくなく日没ギリギリまでできるだけ進もうとなった.ひとまず目標はマムシの川.今日負債を回収しておかないととても4日間で周回は不可能となる.
何だかんだ言いつつも石浜歩きにも慣れ,一時間ちょっとでマムシの川に到着することができた.今日はまだ進めそうだし,オキッチウシ近くの番屋まで行っちゃうか?と話していた矢先…
出た!!ヒグマである.しかも2頭,親子だろうか?谷合から浜に降りて来るやいないや,海へ.
ひょいひょいと泳いでいき,どうやら定置網にかかった魚を採っているようだった.
私たちはこのヒグマの泳ぎの上手さに度肝を抜かれた.事前の打ち合わせでは「何かあったら海に入って泳いでヒグマ避けてすすもうぜ!!」と話していた幻想が見事に打ち砕かれた.
「ヒグマに勝てる要素ないやん…」
私たちにはただ茫然とヒグマが丘に上がって姿が見えなくなるまで待つしかなかった.およそ40分程足止めさせられてしまったが,こればっかりはどうしようもない.
ヘロヘロの寝床探し
日が傾き始め,浜がオレンジに光ってきた.いよいよ寝床が決まらないとヤバい時間帯だ.何より水を持ち歩いていないこともあり,どうしてもオキッチウシ川に行く必要がある.あの時マムシの川で水を汲んでおけば…と何度か思ったが今更後悔しても遅い(笑).
オキッチウシ川の手前に番屋跡のフラット面を発見.この時,事前情報ではオキッチウシ川沿いにも番屋跡があると思い込んでいたのでここはパスしても良いだろうと思い,水を汲みにオキッチウシ川まで歩いた.しかし川の周囲にはそんな番屋跡なんぞはなく,理不尽な石浜が転がっていてとても幕営できるような状況ではなかったため,水を汲んで再度この場所まで戻って幕営をすることとなった.
何とか2日目も暗くなる前には寝床を探し出して滑り込みでゴール!!朝から動きっぱなしでこの日も満身創痍であった.相変わらず晩飯を食べると,速攻で眠りについてしまった.
終わり
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