【北アルプス】黒部源流周遊スキーツアー(鷲羽・水晶・高天ヶ原温泉)(3days)

目次

概要

2022.5.3(火)~5(木)

GWメインディッシュは残雪の黒部源流域へ.ケルカス氏と共に北アルプス最深部に位置する高天ヶ原温泉を目指した.今回は三俣山荘に設営したベースキャンプを拠点にしたので,中日は水晶岳アタック,水晶小屋西面滑走,高天ヶ原温泉,鷲羽岳西面滑走とかなり機動力の高い山行が実現できたので良かった.今後滑りたい斜面も色々見つかり大満足のツアーとなった.

合計距離: 55112 m
最高点の標高: 2978 m
最低点の標高: 1048 m
累積標高(上り): 4974 m
累積標高(下り): -4973 m

1日目:5/3(火)
2:45 新穂高
4:05 ワサビ平小屋
4:35 小池新道登山口
7:35 大ノマ乗越
7:54 双六谷
9:15 双六小屋
10:10弥助沢
11:40三俣山荘

2日目:5/4(水)
4:00 起床
5:50 三俣山荘
6:50 岩苔乗越
7:45 水晶小屋
9:10 水晶岳
10:10水晶小屋
12:00高天ヶ原温泉 12:40
15:00岩苔乗越
16:15鷲羽岳
17:30三俣山荘

3日目:5/5(木)
4:00 起床
6:00 三俣山荘
6:40 三俣蓮華岳
8:40 大ノマ乗越
9:10 小池新道登山口
10:35新穂高

食糧

カレーメシ×6
パウチハンバーグ×2
棒ラーメン
ウイダー×2
おにぎり×3
コーラグミ
胡桃
ノアール
ねり梅

予備食料→ブラックサンダー

詳細

1日目

小池新道~大ノマ乗越

GWとあって新穂高の無料駐車場もいっぱいかもしれないことを懸念して前日21時に現地入り.軽く仮眠してブラックスタートだ.私はテントを入れていることもあって65Lザック.ただでさえ泊装備が重いのに加えてしばらくは左俣林道をスキー&ブーツを合わせたシートラで歩かなければならない.久しぶりに肩に重荷がのしかかり黙々と歩く我慢の時間から始まった.

シートラ&泊装備が重く肩にのしかかる…憂鬱なスタートだ.

4月に弓折岳を滑った際は林道も雪たっぷりだったがすっかり溶けてしまい,雪はワサビ平小屋あたりから.今年は雪どけが早いこともあって小池新道も雪がないかもしれないと予想していたが杞憂に終わった.ちょうど小池新道入口あたりで明るくなり始めここでようやくトレランシューズをブーツに換装.雪面はカリカリが予想されたが昨晩降った降雪の状況が分からないためしばらくシートラで様子を見ながら行くことに.

小池新道の入り口で明るくなってきた.
結果としては大ノマ乗越までシールでいけたかもしれないが,下地は固いのでシートラのまま目指す.

結果としては大ノマ乗越までシートラで歩き切った.途中からラッセルでこれがまた辛かった.しかし新雪のお陰で山はぱっと見厳冬期の様相.4月よりも5月の方が山が綺麗とは(笑).やはり山は行ってみないと分からない.

昨晩の新雪はトータル20cm近くも積もり,ブーツラッセルとなる.けっこうこれがしんどいのよ…

大ノマ乗越からは本日1本目の滑走.双六谷へ250m程落とす.迎えてくれたのはうっかりパウダー.時たま固い下地に底付きこそするものの楽しい滑走となった.しかし泊装備を背負っているとスキーもいつもとバランスが違って難しい.まだ先は長いし若干不安にもなった.

大ノマ乗越は大きく休憩せず双六谷に降りちゃう.ケルカス氏…ここで休みませぬか?
まあ下で休めばいいか!標高差250m程の滑走
まさかのうっかりパウダーです!5月だぜ?

双六谷~双六小屋

双六谷まで落としたらここでようやくシールだ.そしてついでに補給.ここから双六小屋まで登り返しが始まる.正直先ほどのラッセルで体力が削られてしまってスピードダウン.沢筋こそ割れているものずっとスキーで歩けたのは良かった.数日すればここもスノーブリッジが落ちて快適にはいかなくなってしまうだろう.ケルカス氏とは「これが温暖化かぁ」と何度か話題になった.

軽く補給と水分摂取の後,双六小屋を目指して双六谷を詰める.
ラッセルのダメージがでかく1時間以上かかって双六小屋.もうへとへとです.

樅沢 滑走

双六小屋を過ぎてからがようやくスタート地点とも言える.尾根伝いに歩いていってもいいかもしれないがそれだと滑る要素があまりなく楽しくはない.そこで今回は樅沢を落として弥助沢を詰め,三俣山荘を目指すルートを取ることにした.これだと標高差500mの滑走ができる.少しトラバースしたところでシールを剥いてドロップ!ここでもまさかのパウダー斜面で最高の滑走だった.

樅沢を落とす.ここを滑ってる記録はほぼ見ないしこういうのが北アルプスのスキーツアーの醍醐味だ!スタート地点はここからだ!
ここもパウダー!下の方は流石に昇温で早くも重雪に変身してた.
弥助沢の出合へ.

弥助沢を詰める

弥助沢との出合は約標高2100m.ここまで落とすと流石に暑い.稜線は心地いいくらいの風が吹いていたが谷筋は無風でとにかく暑かった.ケルカス氏はここで沢水を補給.水も溶かせば作れるとはいえあまり自由に飲んでいるとなくなってしまうので調整が難しい.私は今回1.5Lのポカリとチャリ用ボトル1本で挑んだが結果としては丁度良かった.弥助沢の出合を少し登れば沢の割れもなく快適に登れたが日射と昇温で新雪が昼前というのにグズグズに.これは三俣山荘に着いてベース作ったら軽く昼寝して気温下がった午後に軽く散歩して終了やね.ここから三俣山荘までは約400mUP.さあ本日ラスト頑張りましょう.

弥助沢の全体像.現地でも事前にルート取りを確認するのはすごい大事.
ケルカス氏,沢水1Lを組み上げて登りに備える.
途中でスノーブリッジを渡った.標高上げると沢は割れてないけど流心は避けて登ることを心掛ける.
北アでも中々珍しい地形に心躍る.
ラスト100mUP.この角度の鷲羽も珍しいね.
昼には三俣山荘に到着.今日はここまで.ベースキャンプを設営しましょう.もうへとへとです.

三俣山荘B.C.設営&トワイライト滑走

初日はなんと昼前に三俣山荘に到着.予報通り若干西風が強くなってきた.テントはブロックを切り出して風防を作ってから設営するのでここで休む間もなく大工事スタート.私のスコップは小さくきれいなブロックが切り出せないのでスノーソーとの合わせ技で.何だかんだ1時間ちょっとかかってようやくベースができると一気に疲れが出てテントでお昼寝タイム.風防があると無風で温かく,昼の日射も強いのでテント内はポカポカでとても気持ち良かった.ケルカス氏がインスタントのお汁粉を作ってくれてこれもまた沁みた.

何だかんだ整地やらブロック積んだりで重労働…
ようやく昼寝ができるよ…
日差しも強くてテントの中はポカポカ.風もない.

16時頃には散歩に三俣蓮華方面へ200m程登った.案の定雪はモナカになっていた(笑).しかし少し寝ると体も軽く夕食前に良い運動となった.帰ってからは水と夕食を作る.水は雪を掘ればザラメの層があり,それを溶かすとかなり効率良く水が作れた.夕飯はカレーメシ.そこそこお腹もいっぱになりかなり満足.ケルカス氏はジップロックに人肌の湯を投入しカレーメシの作成に失敗(笑).固いルーをそのまま食うみたいな残念な晩飯を食べていた(笑).

飯が終われば後は寝るだけ.最後に焼けた鷲羽を見てから寝ようと思うも中々暗くならない.5月頭とあってかいつまでたっても日が落ちず何だかんだ19時近くまで明るかったのは焦った.雪山といえば16時には暗いのに(笑).見た目は冬でも確実に夏に移行しているらしい.寝かけていたがトイレに出たケルカス氏に焼けていることを教えてもらい,さっと写真を撮って速攻で寝てしまった.

このまま夜を迎えるには惜しいので少しお散歩.
槍穂を眺めたりゆったり流れる良い時間を過ごせた.
ベースに帰ってからは水作りと
そのまま夕食も.これから朝と晩はカレーメシです.足りないので1食2パック分を用意した.
日が落ちて鷲羽岳が赤く染まる.眠たくて星を見る余裕もなく速攻で就寝.

2日目

三俣山荘~岩苔乗越

今日は泊装備をベースに置いていつもの日帰り装備でスタート.昨日とはエライ違いで身も心も軽い.しかし高曇りでイマイチテンションが上がらず,加えて雪はモナカ.黒部源流まで落とすにも毎ターン辛い雪だった(笑).とにかく晴れて雪面のコンディションが変わるのを待つ必要があるのでまずは水晶岳へアタックすることに.岩苔乗越への登りは300m程であっという間に着いてしまった.

水作りなんかに時間がかかって4時起き6時スタート.まずは岩苔乗越を目指す.
今日は泊装備がなく軽くてガシガシ登れる.
なんか予報と違って天気悪いね.風が強くて高曇り.気温は低くはないか.
岩苔乗越に乗り上げると水晶岳が見えた.びゅんびゅん風が強い.

水晶岳 アタック

岩苔乗越から見る限り稜線の雪は飛ばされているっぽい.水晶岳直下の西面も雪はないが,水晶小屋あたりからだと岩苔小谷に滑り込めるだろう.とにかく風が強いので早く太陽が来て欲しい.途中まではシールで歩けたが,やはり稜線はシートラでスキーが風に煽られて歩きにくいのなんの.水晶小屋の風下でようやく一息付けた.

スキーは水晶小屋にデポし,山頂へは軽荷で向かう.水晶には初めて来たが想像以上に岩々しててちょっとビビった.核心部には20m程の雪壁もあったが先行のステップがあったことも加え1アックス1ウィペットで完全装備だったので問題なく登れた.それ以外は夏道を辿り気付けば頂上.こんなに麓から遠いピークもない.積雪期に水晶岳に登れて良かった.水晶や赤牛,鷲羽の東面にも楽しそうな斜面が広がっている.また改めて再訪しよう.写真撮影と補給を済ませてすぐに来た道を戻って水晶小屋へ.この頃には天気も好転し始め青空が広がっていた.

いけるとこまでシールで巻いて行こう.
けどやっぱりシートラ.稜線上に雪はない.
牛歩戦法で水晶小屋までやってきた.スキーが風で煽られてバランス取りながら歩くのが大変だった.
とりあえず板は水晶小屋にデポ.水晶岳へアタックです.
雷鳥さんのつがいとも出会えた!
ピークまでは意外と険しい.雪壁が一か所あるね…
アイゼン&1ピッケル1ウィペットを総動員.あともうちょい!
やったぜベイビー!百名山も何だかんだで86座目です.
登りより怖い下り.慎重に小屋に戻ろう.
落ちればタダでは済まない.
核心部は雪壁の登降でした.およそ20m程.三点確保の原則を守れば大丈夫でした.

水晶小屋西斜面&岩苔小谷 滑走~高天ヶ原温泉へ

さて水晶小屋からは高天ヶ原温泉まで一気にワープする.滑る斜面は事前にチェックしていたが西面はゼブラ模様になっていてどこが繋がっているか上からラインを念入りにチェックしていざドロップ.斜度はそこまできつくなく楽しいザラメ!あっという間に岩苔小谷に滑り込んだが,途中で途端に重くなりスーパーストップスノーに…びっくりするくらい滑らず,高天ヶ原温泉まで一気にワープする夢は潰えてしまった.先行に何人かいるらしいがそのトレースを追っても手で漕がないといけない箇所もあり大変だった.

そして樹林帯に入ってからはほとんど平行移動.頑張ってはみたが途中で観念してシールに切り替え.最後は小川を渡ったりシートラで温泉まで苦労して向かったが…高天ヶ原温泉はまさかの枯れて入浴ができなかった…マジですか…辛うじて足湯ができる水たまりならぬお湯だまりはあるので足だけ入浴…あまりにも残念過ぎる.私はこの一件で完全に意気消沈.控えめに萎えてしまった.

水晶小屋の西面を滑って高天ヶ原温泉まで一気に行こう!頂上直下の西面に雪は下まで繋がってなさそうだった.
さあドロップ!
上の方はパックより.次第に重雪へ.
どんどん落とす.
岩苔小谷はスーパーストップスノー.先行トレースを追っても漕がないと進まない箇所もあった.
高天ヶ原温泉は樹林帯の中にあるらしい.随分下ってきて登り返しが大変だぁ…
さあ温泉はもうすぐ…!!
?????
温泉はありませんでした!!
泣いていいですか?
辛うじて足湯だけ…これも入浴ですよね?

岩苔小谷登り返し~鷲羽岳

滑った分は登らないといけない.それが山スキーの真理だ.しかし萎え萎えメンタルで岩苔乗越まで登り返すのはまあ辛かった.およそ700mUPもあるしダラダラ長い登りが続くのだ.日差しが暑くてイライラしていたが途中で沢水を補給するとようやく落ち着いてきて切り替えようという気分になってきた.ケルカス氏がこのままでは成果がないので鷲羽岳の西面を滑って〆ようと提案.これに乗っかって気合を入れ直して登ることにした.

スバリ岳あたりまではそこそこ幸先良く登れたが途中で一気にハンガーノックになってしまい途端に出力が出せなかったのは反省.もうちょいこまめにカロリーを補給するべきだったなぁ…ただ景色を楽しむ余裕はまだあり,日が落ち始めた黒部源流は神秘的で非常に良かった.

めっちゃ萎えてしまったけど登り返さないと帰れません…高天ヶ原の小屋を横眼にトボトボ登る.
良い景色でも腹が立つ.くっそーー!
登り返しは午後で日差しも強くて灼熱.
なんとか水分補給もできた.2L汲んで精神的にも余裕ができた.
何か成果がないと帰れない.当初祖父岳東面を滑って帰る案もあったけど,行きに鷲羽岳西面も滑れそうだったので鷲羽方面へ.
稜線まで上がってシートラ.
ワリモ岳を通りすぎたあたりからハンガーノックになってきて途端にスピードダウン.ケルカス氏申し訳ないす.
だけども西に日が落ち始めて斜光の黒部源流は最高の景色.
鷲羽が見えたぞ!
やりました!鷲羽岳は2回目.

鷲羽岳 西面滑走

さあ西面を滑ってベースに帰りましょう.鷲羽に着く頃には日も落ち始めて多少雪面もマシになっているかもしれないと予想したが想像以上に雪はグズグズ.ケルカス氏がスキーカットをかけ数ターンするとあれよあれよと雪が流れ始め典型的な点発生の湿雪雪崩が発生.ただこれから滑る分には走路をすべれば比較的安心だ.グズグズの雪は重くとても楽しめるような雪ではなかったが,走路は完璧なザラメ.幅3~4m&500m程の走路は完全な小回りレーンでまさかの楽しい滑走ができた.

三俣山荘への登り返しはケルカス氏には先にベースまで帰ってもらい.ゆっくり行くことに.腹が減ってはスキーは出来ぬ.けどこれを登れば今日はお終いというモチベーションで登り切って2日目も終了!

頂上から70mくらい降りた所からドロップ.
雪がグズッていて,点発生湿雪雪崩.走路はザラメで最高か?他はスーパー重雪だったので今回は雪崩て良かった.
朝の下見.滑走ラインはこんな感じ.
後は三俣山荘まで登り返し.ハンガーノックで機敏に動けずケルカス氏に先に行ってもらう.
今日も無事終えられました.後は帰るだけか…寂しいねぇ.

3日目

ずっとスキーばかりで疲れてきているが今日は帰るだけので気が楽だ.撤収を終え荷物を背負うと軽い!確実に軽くなっている.これなら今日も頑張れそうだ.最終日はクラシックに三俣蓮華~双六の稜線をできるだけトラバースして労力を使わないように帰る作戦.途中で雪が少なくて板を脱いだりした箇所もあったがシールは丸山までで済んだのは良かった.そして重力に任せてそのまま双六谷を滑って大ノマ乗越への取り付け一気にワープ!まじでスキーが速いのなんの!

大ノマ乗越へは1日目と違いカチカチのデブリランドになっていた.先行にシールで登っている人がいてマジですか…となったが自分には無理だろう.最初からアイゼンを履いたお陰で比較的安心して登れた.この登りが急でけっこうしんどかったけど登りはここで終わり.あとは小池新道をサクッと滑って帰るだけよ.小池新道も上の方数ターンだけ良かったが後は脚が悲鳴を上げるような重雪.適当に流して滑走終了.最後の左俣林道は再び修行の時間.黙々と歩くことに集中すれば1.5h程で帰れるので気合で降りる.ここにかける時間が短いとまた行こうと思うので大事なことだ(笑).10:30には無事下山!本当におつかれした!

下山後は平湯の森と松本の王将でフィニッシュ!と思っていたが翌日に蓮華岳,その次の日に鑓温泉…まで行くことになり,この行程をこなせた自分を褒めてあげたい…(笑).

撤収完了!
三俣蓮華岳に寄って帰る.
できる限りローコストで帰れるようにトラバースを多用.
再び双六谷へ一気に標高を落とす.
新雪は流石に溶けて所々繋がってなかったけど板のまま強行突破.
大ノマ乗越への登り返しも2日前のパウダー斜面とは打って変わってカチカチのデブリ―ランド(笑).シートラ&アイゼンで登る.これがまたしんどい.
最後はゲレンデ滑走.雪は重いけど早く帰りたい.
黙々と歩いて昼前に新穂高.おつかれした!何食っても合法です.

終わり

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