冬の山コーヒーの最適解を考える

山で飲むコーヒー.あれほど美味い飲み物は他にはない.特に肌のピリピリする寒さの中で飲むコーヒーは格別だ.夏山でももちろん最高だけど,さらにコーヒーの美味しさに磨きがかかるのは秋~冬~春の空気の冷たい時期であることは言うまでもない.特に雪景色の中でのコーヒーはそこらの喫茶店やコーヒーチェーンを遥かに凌駕するポテンシャルがあると思う.

しかし!!!結論から述べよう.私はまだ山でのコーヒーを飲む装備の最適解には辿り着いていない(笑).

ここでは試行錯誤した例を紹介しようと思う.これが皆さんの何か参考になれば幸いだ.

目次

現状の冬の最適解

気温が低いとコーヒーを上手く淹れるのが相当難しい.ましてや高山となると沸点も下がって適切な温度で抽出できなかったりもするし,沸騰してもみるみるうちにに湯温が下がっていく.ましてや冬山だと水の確保すら至難の業となるので時間に余裕がなければ到底ドリップコーヒーを飲むことはできない…

鳳凰山にて雪を溶かして水を確保する(3月)

昔は冬山ならそこらの雪を溶かせば水になるな!!と思っていた時期もあるがかなりの労力と時間と燃料を要する.

全然水にならんくてワロタ!!上の写真の鍋いっぱいの雪でこれだけの量にしかならない.

で結局…登山口で豆を挽いて保温瓶に入れてくるのが一番軽くてお手軽なんじゃないのかと…

登山口で豆を挽けばゴミも道具も運ばなくていい.
初冠雪の別山にて(10月)

しかしこれには課題が残されている.

・コーヒーが生きているのは保温の効いている6時間程度であること

・日帰りにしか対応できないこと

・保温瓶にコーヒーを入れると水分としてのお湯が飲めない

じゃあコーヒー持ってくのやめろよ!

と自分にツッコミを入れたくなるが,これを解決するのが今後の課題だ…

同じく初冠雪の別山にて(10月・-1℃)
アルパインサーモボトル実測:233g

蛇足であるが私はモンベルのアルパインサーモボトルを愛用している.容量は0.35Lと多くはないがここにコーヒーを詰めてくるには十分な容量だ.コーヒーを淹れる前に一度ボトルに熱湯を注ぐと通常よりかなりの時間保温してくれるが丸一日はさすがに厳しい.

試行錯誤

当然,缶コーヒーやインスタントコーヒーだとお湯を持ち込んだり沸かしたり,湯煎するだけで山中でも簡単にコーヒーを飲むことができる.しかもゴミもほとんど出ないし装備の面で負担も少ない.特に拘りがなければこういった文明の利器に頼るのも悪くない.私もUL装備でのロングトレイルや荷揚げをする余裕のない時には迷いなくこういったもので簡単に済ますことが多い.

けれど一度挽きたてのコーヒーの味を知ってしまうともう後戻りはできない.到底缶コーヒーなんかでは満足できなくなってしまう(笑).

ここでは数時間以内に挽いた豆から抽出したコーヒーを飲むことに拘りたい.

下界の道具を山に?!

季節は春.紀伊山地の高山では解け残った雪がたまに残っている.
大普賢岳山頂にて(4月)

山頂でゆっくりコーヒー飲むやつやるぞ!!

そう言ったはいいものの友人Tはまさかのコーヒーサーバーを山に携えてきた(笑).しかもガラス製のコーヒーサーバーを持ってきた(笑).流石…学内でコーヒー部にも入っているだけある.

数人で飲む時は多い豆で抽出してサーバーで受けると安定して美味しいコーヒーができる.今回は残念なことに若干冷めてしまったが,普段より数段美味いものを飲めて最高だった.まとめてコーヒーを作れるのでグループキャンプにはもってこいだろう!

けれどコーヒーサーバーを山で運用していくのはちょっと現実的ではない(笑).当然冬には使えない!!

捻りのない山コーヒースタイル

比良山系・蛇谷ヶ峰にて(6月)

何の捻りもなく面白みはない.普通のクッカーでお湯を沸かし,山頂で豆を挽き,その場で抽出する.軽量化するには登山口で豆を挽いてくればコーヒーミルを持って上がる必要はなくなる.さらにドリッパーもプラスチック製でかさばるので折り畳み式のものを導入することで省スペース化と軽量化を同時に達成できる

山コーヒースタイル・改

実測値は次の通り
テトラドリップ:11g
槍ケ岳山荘限定マグカップ:100g
ジュニアコンパクトバーナー:272g
CB缶:約350g

改良するとこういう感じになった.

ドリッパーはテトラドリップを導入したことで大幅な軽量化に成功.

ドリップポットはコーヒーを淹れることに特化したハイマウントのミニドリップポットを購入.モンベルのアルパインクッカーと比べて重量はほぼ変わらないのは素晴らしい!(ちなみにモンベルのアルパインケトルともそう重量は変わらない.)

・底面積が小さく,沸騰に時間がかかる

・ポットの注ぎ口の強度が心配

しかしこの2点が不満なポイントなのでまだまだ私の道具探しの旅は続くようだ(笑).

実測値は次の通り
ミニドリップポット:204g
P-153ウルトラライトバーナー:141.5g
OD缶(IP-110):203g

もちろんシビアなコンディションではOD缶を持ち込むようにしている.バーナーは捻りがないけどプリムスのP-153ウルトラバーナーが汎用性があって確実だ.全体的にガタツキがないのは素晴らしい.しかしこちらは軽量な分ランニングコストが課題となる.

再加熱してアツアツコーヒー??

シェラカップを導入するとこの悪魔的な裏技を使うこともできる.冷めたら再加熱.悪くない!けれど再加熱は実の所はコーヒー界隈においてはタブーになっている行為…冷めたものを取るか,僅かな味の差を追求するかという選択だ.私は山の上だと補正がかかって多少の差はないし再加熱は問題ないという結論に至った.

UFシェラカップ300:55g
軽くて最高!

私のコーヒー遍歴~山コーヒーへの憧れ~

コーヒーとの初めての出会い

厳密にはコーヒーまがいの物だけど思い返すとコーヒーへの探求はここからがスタートだった.

初めてコーヒーというものに触れたのは高一の頃,ママチャリで初めてロングライドに挑戦したときに飲んだコーヒーである.秋空の紀ノ川沿いで疲労困憊の中,飲んだコーヒーが体中に染み渡ったことは克明に記憶している.アウトドアで飲むコーヒーはこんなにも美味いのかと…衝撃が走った瞬間であった(笑).

引用:岳 第5巻 第1歩P52

さらに,ふと手に取った漫画「岳」の主人公・島崎三歩の影響も大きい.山岳救助を生業とし,山で生活する三歩が美味しそうにコーヒーを飲んだり,要救(遭難した人)に優しくコーヒーを振る舞う場面が頭から離れなかった.それ以来くつろぐ余裕のある山行にはできる限りコーヒーを持ち込むようになった.しかし残念なことにインスタントコーヒーで甘んじていたのでこの時はまだ真のコーヒーの良さを知らずにいたことを追記しておこう.

今現在のスタイルへ

食後に雪景色の中山荘のテラスで飲むコーヒーは最高!

私の今のコーヒーのスタイルが確立し始めたのは大学のスキー部に入ってからである.当然スキー部とあって雪のある時期には山荘に籠ってスキーに明け暮れる.そこでの生活では食後に豆を挽いて雪景色前にしてコーヒーをすする一種の文化が確立していた.そこでようやく挽きたてのコーヒーの味を知ってまた衝撃を受けたのだ.(それまで喫茶店やスタバなんかには行ったことがなかったことは内緒)

え…インスタントコーヒーと味が全然違う…

今まで飲んでいたものはコーヒー紛いのものだったのか…

缶コーヒーやらインスタントコーヒーで満足していたのが急に恥ずかしくなった.あれはコーヒーではなく「缶コーヒー」や「インスタントコーヒー」というジャンルの飲み物だったことにようやく気が付いた.これが大学一回生の冬のことである(笑).そういや三歩は豆から挽いてたぞ!

それを知ってから挽きたての豆からコーヒーを淹れることに拘りをもって山やスキーに臨む今がある.しかし飽くなき山コーヒーへの探求はまだまだ続く.

終わり

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雑記